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6月19日(月) 第10回交渉学「リーダーとの対談(遠藤典子先生)」 ~三田キャンパス

本日の講義の流れ

▼杉田先生 ― リーダーとの対談に向けたグループ対話
昨年の「リーダーとの対談録」を読み感想や疑問点を共有し、質問したいことを学生同士で明らかにした上で対談に臨みました。

▼遠藤典子先生・田村先生 ― リーダーとの対談

KGRI特任教授、遠藤典子先生にお越しいただきました。遠藤先生は、大学での研究以外にもNTTや阪急阪神ホールディングスなどの社外取締役を務められるなど、幅広くご活躍されています。
専門とされるエネルギー政策や経済安全保障の話に加えて、これまでどのようなキャリアを歩んで来られたのか、病弱だった幼少時代、ダイヤモンド社に女性初の記者として入社し、女性初の副編集長になられるなど、ご自身が切り開いて来られた貴重な経験談は、まだまだ日本では数少ない女性リーダーのロールモデルとして受講生の心に刻まれたのではないでしょうか。
学生からの質問は途切れることなく、瞬く間に90分が過ぎていきました。

履修生の学び ~講義後に提出される振り返りシートより抜粋

● 法学部法律学科4年生

何足もの草鞋を履いていらっしゃる遠藤さんが、一度社会人としてのキャリアを築いてから研究の道に入った話を聞き、背中を押された。私も卒業後は、一度は社会人としての経験を積み、心から学びたいテーマが見つかったら大学院に進学しようと考えている。大学卒業後すぐに大学院に進学しなくとも、動きながら、経験しながら、自分でやりたいことを見極めて、自分の道をしっかりと拓いていきたいなと思った。遠藤さんの仰っていた、骨の疼くような辛さを覚悟して、突き進みたいと思った。キャリア転換をすると、これまで積み上げてきたことが水の泡になるというような考え方も可能である。しかし、スティーブ・ジョブズがリード大学を中退し、聴講生として学んだcalligraphyが後のiPhoneの美しいデザインに生かされたように、人生における多様な経験は後に繋がることを信じて、様々な方面の経験を積みたいと思った。

● 法学部法律学科3年生

学生は安全保障をどう学ぶべきか、環境問題にどのように向き合うか、の二つが印象に残った。安全保障は日本の中ではイデオロギーの議論であり、学生は冷静な心でリアリズムに徹して、グローバルな情報収集に努め総合的に自分の意見を持つことが大切だ。そして把握に留まることなく、自分の中でネクストアクションに繋がるような解を自分の中で持つという考え方は、賛否両論ある難解な問題に対して無学な自分が学ぶ上で大変参考になるロードマップとなると思った。

また、環境問題に対する姿勢については、どうすれば産業競争力を保った上で環境を改善していくか、という考え方は参考になり、SDGsという一見平等な社会課題として認識していた私にとって、再生エネルギーの技術の洗練度の観点からEUに有利となるという話は大変興味深かった。

私は現在ボランティア団体を立ち上げ、運営している。地元の街を掃除することで美化に励み、植林活動を行い緑を増やす活動を通して地元の街から世界の人の意識を変えるきっかけを与えたいと思い活動している。しかし、この活動は遠藤さんの仰っていた適応ではなく削減のアプローチの域を出ない。活動に限界を感じながらも次のステージの解像度が浅く、努力の方向も迷走気味であった。今回の話を通して、より高い視座で大きなインパクトを与えられるようなステージに踏み出したいと決意する契機となった。

● 法学部法律学科3年生

自分の欲は、知っている状態にあること、知識欲と考えているというお話に最も感銘を受けた。どんなに聖人とあがめられている人であっても、それはその人なりの願望に従った結果が他人からそう見えているだけだと私も感じている。他人のために力を尽くすという行為も他人のために力を尽くしたいという願望の表象でしかない。つまりは自分自身の本当の欲がどこにあるのかを理解することこそが、最も効率的に自身のモチベーションを最大化するために必要になるはずだと思う。遠藤さんはおそらく私と同じような理解を持ったうえで徹底的にその部分を実践し、今のような幅広い知識を持つまでに至ったのだと感じた。

特に、エネルギー分野についての知見は圧倒的であり、原子力のリスクを知る日本は産業のために原子力を推進していくのかが今後大きな論点になっていくことが学習できてよかった。最近私が興味を持っている宇宙法の分野についても同じような問題が生じており、1970年代後半のコスモス954の墜落事故から避けられてきた原子力ロケットが、太陽光の届かない深宇宙に進出していくためや、火星に人を届けるための技術として見直されつつある。すでに今年の年初にNASAが原子力をエネルギーとしたロケットの開発に着手することを発表している。上述した事件の際にはソ連に賠償金を支払わせることができず、その後明確な進歩もない宇宙関連法制は、この新たなトレンドについてどのように対応していくべきなのか、動向を見守りつつ日本のエネルギー業界がとるべき方向性の参考にもできるのではないかと思った。

● 文学部3年生

遠藤さんの講演全体を通して感じたことは、情報をより多く持っておくことの重要性である。世の中がいかなる時代かを、本や人からの話、実際に現場を見るなど様々な方法で広範囲で理解し、その情報を持って相手と接し、仕事をすることが、人として、社会人として、性別や年齢関係なく他人と対等に仕事をする上で必要だという彼女の主張がとても印象に残っている。私は、何かと情報を集めたり世の中の流れを把握したりすることが苦手なので、しっかり時間をとって、自分の中の情報ストックを増やす努力をする必要があると感じた。

また、彼女がWILL(志)を自覚した経緯について質問させて頂いた際、自分はそこまで大きな意志や野望を持てる人間ではない、と発言されていたことも印象的だった。これまでこの授業の「リーダーとの対談」や、文明塾卒業生トークセッションでお話し頂いた方々も皆、大きな野望を抱いていたというよりは、目の前のやるべきことに全力で取り組んできたと仰っていた。将来のやりたいことを具体的に考えても、その通りに真っ直ぐ進むことは難しく、今自分が熱中していることに全力で向かっていくことが大事だと改めて気付かされた。